福島県双葉郡
富岡町・大熊町・双葉町・浪江町
2024年4月6,7日
「夜の森桜まつり」にあたって





後記
2022年6月12日に葛尾村の帰還困難区域(野行地区)で避難指示が解除されて以来、もう何度目だかわからない福島来訪となった。
いつものように徒歩で現地を巡る。単純に運転免許があれば、再生電力に注力している現地のシェアEVカーを利用する手立てもあるし双葉町のレンタルサイクルもある。浪江町では町内タクシーも運営されている。
… 金銭的なことを考えないではないが、どうもいつも徒歩で巡りまわることを選んでいる。結果として、マスメディアの報道では決して見られないような一面と対峙できたり、思いもよらない現地の方との出会いもあるわけで。
いつもいつも現地のセコムパトロール隊に行き先を阻まれ、意図せず建設会社の邪魔をしては怒号を飛ばされる始末なのだけれど、時折出会う現地の方は、いつだって心地よい挨拶を交わしてくれる。
世界中の誰かが僕の撮った写真を見て『原発被害のあった場所は十数年経ってもまだこんな風なのか』『ここではこんなにも建て直しが始まっているんだな』とか、報道メディアが拾いきれないような箇所のリアルな写真を以て、気がついてもらえさえすれば。でもそれすらなくったって、現地の方の心地よい挨拶さえあれば、もうなんだっていいとすら思えるのだった。
たぶん僕は写真が好きだ。まだはじめて3年そこいらだから、そう胸を張って言えたもんじゃないけども。
ただ好きなものだからこそ、それを以て誰かの役に立ちたい。反対に言えば、誰かの役に立てることは自分の好きなことになり得る、今までがそうだったみたいに。
それともう一つ、僕は「お酒の席」が好きだ。お酒それ自体を美味しく嗜むのも好きだし、その空間の中、一緒に飲む相手から思ってもない言葉が飛び出してきたり、その場で予想だにしない繋がりができたり。いろんな相談事をするのも「お酒の席」がいつもあった。単なる相談事じゃない、お酒が伴う必要のある相談事だから。そうやって人の話を聴くのが好きだったし、それで役に立てるのが嬉しかったから、好きでもあった。自分でバーをつくるくらいに。
他の何をとってもそうだと思う。執筆も、僕の書く文章が『簡潔で正確で』と言ってくれる人がいたから、その人の役に立てているのを感じたから、好きになった。要は、「誰かの役に立てることがいちばんの幸せ」なんだと感じているんだろう。…うそ、でも、ちょっと見栄もあるな。『これが出来てるオレいけてる』みたいな。でもそれは、ちょっとくらいみんなある。
福島を撮り続けているのも、そういうことなんだと思う。役に立ちたいという気持ち、あと、ちょっとの見栄。
方法なんてなんだっていいんだと思うけれど、残念ながら今の僕には写真と執筆くらいしか特筆することがない。
でもだからこそ、『何くそっ』ってやり続けなきゃいけないんだと思う。できるうちに。