Modern Narcissus

とあるキュレーターから『セルフポートレートは堅固なナルシズム思想に着想される』と言われた。無学の身からしてその言葉が批判なのか賛辞なのかわからなかったが、少なくとも”ナルシズム”という言葉に揶揄のニュアンスがあることだけは感じ取れた。

それならば、ナルシズムという言葉は何を含意しているのだろう。高慢、自意識過剰、自惚れ、プライド、… そのあたりだろうか。仮にそうだとすれば、それらは全てギリシア神話のナルキッソスから生じたイメージではなかろうか。愛するものを所有できない罰を受け己のみしか愛せない身となった彼が、湖面に映った自分の虚像に恋し、接吻を試みて溺死するという、そういう神話が脈々と引き継がれ累積した結果の”自惚れ”なのではなかろうか。

現代では、このナルシズムが自己愛という形に変様し、メンタルヘルスを支える備えるべきひとつの精神衛生環境と看做されているように映る。自身を愛することは、我が身というデジタルともリアルともつかない境界線上にただひとつ存在する”私”という決して決壊させてはならない孤塁を守る最後の砦としての方策に思われてならない。

それは決して、自惚れやプライドなどという他者比較的な社会のもとに生まれる匿名的な自己ではないはずだ。それは、現代の中我が身を生き存えさせる、現代のナルシズムの解釈に拠るものだと考えている。

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